2017年11月6日、決算特別委員会で質疑しました。

財務諸表について

Q1.新公会計制度が本格導入されて2年目ということで、今後、この制度を使って、本市の行財政運営をどう改善していくかという観点から何点かお聞きしたい。新公会計制度を導入した意義としては、これまでの決算情報では明らかでなかった資産・負債やフルコスト情報が把握できるようになり、本市の財務状況の全体像が正確に見えるようになったということである。今年は経年比較も可能となり、情報の厚みも増したと思う。これらの財務情報は、本市の行財政運営にももちろん役立つが、市民の知る権利に応え、本市の財政状況についてきちんと説明責任を果たすうえでも大いに活用されるべきものだと考えている。市政情報については、市民目線による発信が大事だと考えるが、財務諸表の公表に際しては、具体的にどのような工夫を行っているのですか。

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A1. 委員ご指摘のとおり、新公会計制度は本市財政の透明性を高め、市民や議会等に対する説明責任を果たすことに寄与するものであり、財務諸表から分かる本市の財政情報を市民の目線で分かりやすく公表するため、資産の状況や行政コストについて勘定科目の説明や内訳、前年との比較などを記載した概要版を作成し、財務諸表本表と併せてホームページで公表している。財務諸表の内容の説明は、複雑・難解にならないよう、できるだけ専門的な言い回しを避け、必要に応じて用語の解説を加えるなど、たくさんの方々の目に触れ、興味を持ってもらえるよう、工夫を凝らしてまいりたい。今回公表した内容が、市民にとって見やすく・分かりやすいものとなっているかどうかについては、12月に実施予定の市政モニターアンケートを利用して検証し、次年度以降も引き続き公表内容や方法の改善を図ってまいる所存です。

Q2.財政状態の良し悪しは、市民サービスに直接影響を及ぼすものであり、市民の関心も高い。財務諸表からどのようなことが読み取れるのかといった点について、市民により分かりやすい情報開示に努めてもらいたい。今回、配布された委員会資料は非常にわかりやすく整理されているが、これを素直に読めば、本市の財政状況は決して悪くないと思う。本市の財政状況は、今後とも厳しい状態が続く見込みであると言われているが、むしろ着実に健全化が進んでいるように思われる。市財政の現状について、将来的な課題も含め、全体像として財務諸表からどのようなことが読み取れますか。

A2.貸借対照表を見てまず目にとまるのは、資産規模の大きさである。15兆円という総資産そのものの大きさもあるが、その規模は大阪府と愛知県の持っている総資産を合算したものに相当する。ただし、資産の9割は、事業用資産と売却困難なインフラ資産であり、負債の9割もそれら資産整備等に関する地方債となっており、資産規模の大きさをもって直ちに財政基盤が強固だとはいえない面もある。50%を超えている減価償却率が実際の老朽度や損耗の度合いを直接示すものではないが、資産の老朽化の進展による更新等の資金需要が膨らむリスクがあり、更新計画や適正な維持管理などアセットマネジメントが重要となっている。一方、流動比率の低さ、すなわち今後1年間に支出が認められる流動負債が同期間中に現金化が可能と認められる流動資産を上回っており、短期的な資金は潤沢とはいえず、基金の取り崩しや一時借入など、資金繰りの対応が必要な状況が続いていることも見て取れます。

Q3.財務諸表から読み取れる財政状態を説明してもらったが、楽観できない要素もあることは否定しない。しかしながら、例えば、民間企業の場合に1年間の営業(経営)成績を示す損益計算書にあたる行政コスト計算書を見ると、経常収支差額、民間企業でいう経常利益、は1,158億円の黒字になっており、しっかりと本業で利益を出している。これに現金支出を伴わない減価償却費966億円を加えれば、約2,100億円もの活動原資があることになる。キャッシュ・フロー計算書でも、地方債収入と地方債償還金支出を比べると、償還支出が約1,600億円も上回っているうえに、全体の収支は若干ではあるがプラスとなっている。これを見ても、しっかりと借金である地方債を減らし、借入金に過度に依存することなくキャッシュ・フローを回せていることがわかる。こういった状況を見ると、他の自治体と比較してむしろ健全ではないのかと思われる。聞けば、現時点では、他の政令市には本市と直接対比可能な財務諸表を公表しているところはないようだが、例えば、本市が制度の導入にあたって参考にした大阪府の一般会計の通常収支を比べると、3,600億円余りの開きがあり、本市の財政状態のほうが良好であるように思われるが、実態はどうですか。

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A3.行政コスト計算書は、資産形成につながらない経常的な行政活動に要するコストだが、官庁会計では計上している施設の建設などの投資活動や地方債償還などの財務活動にかかる経費を含んでいないため収支が大きく好転しているように見えている。おたずねの府市比較であるが、それぞれの財務諸表を一般会計ベースで比較すると、本市の経常収支差額が1,158億円であるのに対して、府ではマイナス2,530億円と大幅な差があるように見えるが、これは本市と府では地方債の仕訳方法など会計処理の方法に違いがあるためであり、その影響を除いて純計(各会計合算)ベースで試算すると市:1,239億円、府:366億円、差額:873億円となる。府と本市の違いについては、府の場合、税収を府下の市町村へ配分したり、教職員や警察官の人件費といった広域的なコストが含まれていたりするなど行政構造の違いもあるものの、数字としては、今申しあげたように本市の経常利益のほうが大きくなっています。

Q4.行政構造の違いがあるとはいえ、同じルールで比較すると、各会計の合算で府の3.4倍ということで、本市のほうが財政的な余力があるということである。本市には負の遺産が今なお残っているものの、一定処理が進み、今後が見通せるようになった現状において、必要以上に危機感をあおるのはいかがかと思う。行政コスト計算書で経常費用の何が減ったのかを見ると、他会計への繰出金の減が大きい。しかしこれは市街地再開発事業の廃止に伴うものであり、実質的な削減要素としては、前年度と比べ53億円、2.9%減少している給与関係費が最大である。給与関係費をそこまで削らねばならないほど市財政は逼迫しているのか。人件費の問題は後ほど改めて議論するが、市民サービスの向上は職員の資質にかかっており、このままではやる気のある職員が報われなくなり、職員のモチベーションが下がるのではないかという懸念を禁じえない。財務諸表を見る限り、本市の財政状況はそこまで厳しいとは思えないが、効率的な行財政運営をいっそう進める必要があるのであれば、今までとは違った新たな視点で施策事業の見直しを進め、無駄を省き、市民サービスの向上につながる財源を生み出すべきである。新公会計制度はそのためのツールになり得るのではないか。単年度にとどまらず、一定の条件を置けば、将来のストックやフルコストの状況も予測できる制度である。事業の見直し等のマネジメントへの活用の取組はどうなっていますか。

A4.これまで、新公会計プロジェクトを通じて、制度構築と併せて活用方策の検討を進めてきた。平成28年度末までに、活用の視点やそれに沿った想定事例を「財務諸表活用方策」として取りまとめ、各所属に周知するとともに、債権管理や資産マネジメントへの活用を視野に入れ、モデル的な取組を行うパイロット事業を選定し、活用方策の実践・検証を行ってきた。プロジェクトは昨年度末に一定所期の目的を達成し収束したが、本年5月に、市政改革室や財政局等の関係所属とともに、「財務諸表等の活用促進調整会議」を設置し、財務情報を使った事業見直しや予算編成など各所属がマネジメントに活かすことができる仕組み作りを進めている。具体的には、市民利用施設の受益と負担の適正化に向けて、減価償却費等を含んだフルコストで受益者負担率を算定し、今後の使用料の検討材料の一つとして活用することを検討している。また、未収債権対策などのパイロット事業の実践・検証の深化を図り、その結果を汎用的な活用方策として、全所属に情報発信できるよう取りまとめる予定である。

Q5.市民利用施設の受益と負担の適正化など特定の事務事業を採り上げて活用を検討しているとのことである。そういった取組も大事だが、「質の高い行財政運営の推進」のためには、より大きな視点から事業マネジメントに活用していくことがなお重要である。例えば、今回、府営住宅が市へ移管されたことに伴う特別利益が計上されているが、住宅という資産を引き継いだり、あるいは施設の新設や寄贈を受けたりすると、市民サービスの向上につながるというメリットもある一方で、将来的にそれを維持管理していくためのランニングコストが必要になるといった面もある。財務諸表の形で事業の全体像を把握できれば、将来の更新需要に備えた減価償却費や施設等の維持管理に要する人件費や物件費などランニングコストも含めてPDCAサイクルを回すことにより、事業の効果をチェックし、見直し等につなげていくことなども可能となるのではないかと思う。他都市の先駆的な取組事例なども参考にすれば、事業マネジメント等に活用できるヒントや方策も出てくると思うが、今後、一層の活用促進に向けて会計室としてどのように取り組んでいくのか。

A5.財務諸表の活用については、先程も担当課長が答弁したように、市政改革室や財政局等の関係所属とともに、事業見直しや予算編成などマネジメントに活かすことができる仕組み作りを進めているところであるが、各所属が自律的に財務諸表等を事業マネジメントに活用できている状態には至っていない。この要因としては、これまでは経年による比較ができなかったこともあるが、各所属において新たに財務諸表から事業を分析・評価するメリットが分かりにくく、活用へのインセンティブが働き難いことが考えられる。委員ご指摘の他都市における取組事例については、東京都や大阪府でもマネジメントへの活用には苦心していると聞き及んでいるが、先駆的な取組みとしては、東京都町田市において、「課別・事業別行政評価シート」を作成し、財務諸表の情報をPDCAサイクルのツールとして事業の分析・評価に活用している事例があり、議会質疑でも積極的に活用されていると聞いている。今後、このような先行事例も参考にしながら、関係所属と連携・協力してモデル的な事業における活用事例を積み重ねる中で、活用に向けた気運の醸成を図り、全庁的な活用促進を進めてまいる所存である。

Q6.財務諸表の事業マネジメントへの活用については、会計室が市政改革室や財政局等の関係所属と協力して財務諸表の活用方策を検討、発信していくこととしているようであるが、実際に事業のPDCAなどに活用し、事業の見直しにつなげていくためには、当該事業部局はもとより、PDCAや予算を所管している市政改革室や財政局をはじめとした関係所属の主体的・積極的な取組みも不可欠である。市民サービスを向上させ、「質の高い行財政運営の推進」を達成するためにも、会計室だけでなく、関係所属が一体となって新公会計制度を定着させ、財務諸表から得られる情報を事業マネジメントに有効活用する取組みを進めるよう、連携・協力を要望しておきます。