活動レポート

大都市税財政特別委員会で質疑2018.1.11

2018.1.11
大都市税財政特別委員会で質疑しました。
〇財政シミュレーションについて
Q1.財政シミュレーション及び設置コストについてお聞きする。まず、先日示された財政シミュレーションは、どのような考え方に基づき示されているのか、改めて確認する。


A1.先般お示しした財政シミュレーションについては、特別区の区割り案を比較検討するための材料のひとつとして、また、特別区の財政運営が将来的に成り立つか協議するための参考資料として、副首都推進局において推計したもの。推計にあたっては、大阪市の「財政に関する将来推計」、いわゆる「市の粗い試算」の数値を、「特別区(素案)」でお示しした制度設計案をもとに、特別区分・大阪府分に仕分けた後、これに反映されていない改革効果額・組織体制の影響額・特別区設置コストを加味して推計している。また、設置コストにおける庁舎については、建設案と賃借案を示しているが、財政シミュレーション上は、イニシャルコストが高くなる庁舎建設のケースを使用している。なお、推計にあたっては、現時点で把握できる数値をもとに一定の前提条件をおいたうえで行った極めて粗い試算であり、相当の幅をもってみる必要がある。


〇設置コストについて

Q2.財政シミュレーションについては、大阪市の「粗い試算」をベースに、設置コストや未反映の改革効果額を加味しているとのことである。では、設置コストについてお聞きする。素案では試案AからDの4案に対し、不足する庁舎の確保について、それぞれ建設案と賃借案が試算されており、全部で8通りの金額が示されている。複雑を極めており、委員会冒頭で訂正のあったとおり、事務方も数字を誤るような代物であり、信頼が置けるものかどうか、どうも心もとない。そこで、試案A建設案を例示として、その積算根拠が正確かつ妥当であるか確認したいと思う。まず、新庁舎建設に係るコストについて、金額とその内訳について説明いただきたい。

A2.新庁舎建設経費のコスト試算にあたっては、コスト抑制の観点を重視し、既存の庁舎として利用している市保有庁舎や民間ビルの活用を前提とし、必要となる執務室面積に応じ、新庁舎を建設することとしている。そして、試算上は民有地の買収を前提としている。用地費や設計費を含む、新庁舎建設経費の総額は177億円。内訳として、新庁舎建設費は、直近10年間の区役所建設事例から1㎡あたりの平均建設単価371,600円を算出し、必要延床面積34,962㎡にかけ、129億9千万円。設計費・工事監理費は、国土交通省の積算基準等より試算し、3億6千万円。用地費は、必要敷地面積に土地単価をかけ、43億6千万円。

〇新庁舎建設場所について

Q3.建設費や設計費は過去の事例や国の積算基準等に基づき単価を出しているが、用地費については、土地単価と敷地面積を元に試算したとのことである。土地単価を出したということは、具体的な新庁舎建設場所が決まっているということなのか。

A3.現時点では、具体的な新庁舎建設場所の想定は行っていない。土地単価については、特別区ごとの平成29年1月1日時点の地価公示地点の価格を平均し、単価を算出している。具体的には、第二区の場合、区内地価公示地点74箇所の平均で、1㎡あたり土地単価28万2千円。第四区の場合、区内地価公示地点82箇所の平均で、1㎡あたり土地単価30万2千円。 〇新庁舎建設コストについて

Q4.新庁舎の建設場所がまだ決まっていないのに、土地単価を出したということなんですね。特別区ごとの平均値を使ったとのことであるが、市内中心地と周辺地では土地の価格差が大きい。新庁舎を利用する住民の利便性を考えると、新庁舎は当然のことながら、交通利便性の高い市内中心地エリアに建設されるべきであり、それに基づいた土地単価を用いてコストを試算すべきであると考える。市内中心地に新庁舎を建設した場合、用地費はどの程度増加するのか。

A4.繰り返しの答弁となるが、現時点では、具体的な新庁舎建設場所の想定は行っていない。コストを試算する上で、土地単価については、特別区ごとの平成29年1月1日時点の地価公示地点の価格を平均し、単価を算出している。

Q5.あくまでも平均値を用いて試算するとのことである。先ほど、西委員の質疑において、未利用地の売却代金は特別区に人口割りで配分するとの答弁があったが、個別の事情は勘案せずに、売却益は人口割り、土地の単価は平均値と、ずいぶん乱暴な話であるように感じる。住民に身近なサービスを充実させるための特別区制度と言うのであれば、住民の利便性を考慮して庁舎を定めたうえで、試算すべきところを、机上の計算で試算されたコストということである。コストを少なくするために、このような手法を用いているのではないかと思わざるを得ない。財政シミュレーションでは、新庁舎建設案のコストを使用しているが、実際のコストはこれより上ぶれする可能性があることから、そのコストの数字を使ってシミュレー ションしないことには、財政運営が将来的に成り立つかどうかの判断は出来ないのではないか。財政シミュレーションの信頼性を高めるためにも、また、住民の利便性についても考慮した上で、市内中心地に新庁舎を建設するといった現実的な想定でコストを試算すべきであるが、改めて試算をするのか、しないのか、局長にお伺いしたい。

A5.コスト試算にあたっては、一定の条件を設定したうえで試算したものである。例えば、先ほどお答えしたように、土地単価については平均を用いて単価を算出しているが、一方で保有庁舎改修においてはその全ての床面積を改修する想定で算出をおこなうなど、一定の幅を持った試算となっている。そして、この試算したコストについては、設置の時期や社会経済情勢等による変動の可能性があると考えている。また、今後、法定協議会で議論いただく中で、事務分担や組織体制等などコスト  試算にあたっての前提条件が変更になれば、試算額も変動すると考えており、協議会からのご指示に基づきコストの再試算を行うこともありうると考える。しかしながら、先ほどからの答弁とおり、現時点では、具体的な新庁舎建設場所の想定は行っていないことから、改めてのコスト試算は現時点では検討していない。

〇新庁舎建設場所のスケジュールについて

Q6.具体的な新庁舎建設場所の想定を行っていないから、改めてのコスト試算はしないとの答弁であるが、そもそも、素案作成当初から具体的な新庁舎の建設場所の想定もすべきではなかったのか。住民にサービスを提供する拠点となる新庁舎の場所が決まっていなければ、素案の是非の判断などできないではないか。今、場所の想定をしないというのであれば、いつ想定をするのか。行政としても、協定書作成に向けてのスケジュール感は当然持っていると思うが、そのスケジュールにおいて、いつ想定をするつもりなのか、お答えください。

A6.素案において、「本庁舎の位置については、今後、法定協議会における議論を踏まえたうえで、案の提示を行う」と示しており、協議会の決定事項であると考えるが、具体的には、区割りが絞り込まれた後、案を提示することが想定される。しかしながら、この時提示するのは、あくまでも本庁舎の位置についてであり、新たに建設する庁舎の位置ではない。なお、新庁舎の具体的な整備にあたっては、建設や賃借を柔軟に組み合わせ、整備を図ることとしており、また、新庁舎建設においては大阪市保有地の活用ができる場合は、積極的な活用を図るものとしている。

Q6-1.スケジュールは明確に示されなかったと理解する。新庁舎建設場所の想定はされない、加えて、設置コストが増大する可能性もあるにもかかわらず、コストは試算しない、財政シミュレーションに反映させない、つまり現実的な想定がなされていない、実に空疎な素案であると私は受け止めている。スケジュールも不明であるが、もっと時間をかけ、様々な想定・試算を行うべきであり、拙速に議論を進めるべきではないことを指摘しておく。

〇財政シミュレーションについて

Q7.次に、財政シミュレーションについてお聞きする。先ほどの質疑で、庁舎建設にかかる用地の取得に際し、設置コストが増大する可能性があり、設置コストが増大するのであれば、特別区の財政運営を推計する財政シミュレーションにも当然反映すべきであることを指摘した。実際に設置コストが増大した場合、シミュレーションの収支が悪化すると見込まれるが、悪化した場合には、どのような対応が考えられるのか。

A7.自治体の財政運営においては、収支悪化の場面では経費削減などの歳出抑制や歳入確保などの方策を講じた上で、なお必要な場合に財政調整基金を活用するといった対応が行われるのが通常であり、特別区においても同様の対応が講じられるものと考える。財政シミュレーションにおいては、各特別区に承継される区財政調整基金を含めて、各年度の収支差を累積したものが財源活用可能額という形で、各年度における対応余力をお示ししている。この財源活用可能額を基金に積み立てるのか、各年度の事務事業に充当していくのかは、特別区長の財務マネジメントであり、単年度の収支不足となる場合は、この財源活用可能額を活用することとなると考えている。

〇区財政調整基金の活用について

Q8.設置コストが増大した場合については、区財政調整基金の活用などにより対応するとのことであるが、そもそも財政調整基金とは、これまで長年にわたる大阪市の努力により、積み立てられた市民の貴重な財産であり、税収の急減や災害等の突発的な財政出動、財務リスクへの対応や今後の収支不足に備えることを目的として設置されたものである。財政調整基金の設置目的に収支不足への対応が含まれているが、特別区の設置コストによる収支不足というのは、行政側の都合により生じたものであり、これを補うために基金を活用することは、基金の設置目的から逸脱している。今後、税収の急減や災害等の突発的な財政出動が必要となった場合に対応できなくなるのは明らかである。そのような事態になった場合の責任は誰が取るのか。

A8.財政調整基金は、税収の急減や災害等の突発的な財政出動、財務リスクへの対応や今後の収支不足への備えるために、ほとんどの自治体が設置している基金であり、本市においても、様々な要因で歳出の増加や歳入の減少が発生するなか、歳出削減や歳入確保の取組みを行ってもなお残る収支不足への対応に活用されてきたところである。収支不足が生じた場合の実際の対応としては、まずは特別区長のマネジメントのもと、歳出削減や収入確保などの取り組みが行われることとなるが、財政シミュレーション上は、財源対策の一例として、収支不足には区財政調整基金を含む財源活用可能額を活用することとして試算しているところである。なお、災害等の突発的な財政出動が生じた場合の対応については、事態によっては国と協議・調整も行いつつ、起債などによる財源確保をはじめ、財政調整基金の活用も含めた対応が、特別区長のマネジメントのもとで講じられることとなる。

〇区財政調整基金について

Q9.特別区長のマネジメントで対応するとのことである。要するに、特別区長が責任を取るということで理解していいのですね。財政調整基金の残高が減少することで、特別区の財政運営が硬直化するのではないかと懸念するところである。財源が豊かな東京都においても、財源の確保について、毎年、東京都と特別区の間で激しい議論が交わされていると聞いた。大阪においては、大阪府・大阪市ともに地方交付税の交付団体であり、現状でも厳しい財政運営を行っていることを考えると、特別区が事務執行を行うために必要となる財源を、財政調整交付金により、適切に配分できるかどうかの担保も保障もない。将来の不安への備えである、市民の貴重な財産である区財政調整基金を、特別区の設置コストに使うことで生じるデメリットについて、きちんと市民に明示し、説明すべきであると考えるが、市長の考えをお聞きしたい。

A9.特別区設置に伴うコストについては、素案で示しているとおり。制度改革によって、大阪がさらに成長し、「豊かで強い大阪」を実現するためには、一定のコストが必要であるというのが私の考えであり、この間もそのように説明してきたところである。財政シミュレーションでは、あくまでも財源対策の一例として、収支不足が生じた場合の対応として、区財政調整基金の活用などを示しているものであり、実際の財政運営においては、特別区長のマネジメントにより、財政調整基金の活用以外に様々な対応が行われることとなる。今後とも、市民の方に対して丁寧で分かりやすい説明に努めていく

〇改革効果額について
Q10.次に、改革効果額についてお聞きする。財政シミュレーションでは、推計されている4パターン全てにおいて、平成48年度 時点で基金残高が積み上がっている。一方、市の「粗い試算」を見ると、推計期間の平成38年度まで単年度赤字が続いており、大きな収支改善の要素が見られない。この違いについては、財政シミュレーションに反映されている、市の「粗い試算」に未反映の改革効果額がその要因と考える。財政局が作成した市の「粗い試算」と副首都推進局が作成した財政シミュレーションに反映されている改革効果額の違いについて教えてほしい。

A10.改革効果額について、副首都推進局がお示ししている財政シミュレーションにおいては、平成23年12月の大阪府・大阪市統合本部設置以降に実施してきた改革により見込まれる効果額を所管部局に照会のうえ取りまとめ、市の「粗い試算」に見込まれているものを控除して、現時点で算出可能なものを効果額として見込んでいる。なお、財政局が作成した市の「粗い試算」では、作成時点である平成29年2月時点において効果額が確定しているもの、効果額の発現が確実なもののみが反映されており、方針決定されていないために効果額を確実に見込めないものなどは、反映されていない。

〇改革効果額について

Q11.財政局が作成した市の「粗い試算」では、改革効果額が確定、または確実なもの以外は反映されていないとのことであるが、市の「粗い試算」、は毎年作成されるものであり、作成時点で改革効果額が未確定または不確実であるものを反映していないのは、理にかなっていると考える。その一方で、副首都推進局が作成した財政シミュレーションは、毎年作成するものではなく、一度作れば、これが一人歩きしてしまうものである。前回の協定書の時もそういった金額が確実に担保されるかのような誤解を生んだところである。ましてや、改革効果額は特別区設置によるものではなく、大阪市がこの間、努力してきた結果により発現しているものである。そうしたことを考えると、市の「粗い試算」に見込まれていないものを、財政シミュレーションに見込むのはおかしいのではないか。市民に対して正確な情報提供とはなっていないのではないか。

A11.財政シミュレーションの趣旨の一つは、特別区の財政運営が将来的に成り立つかどうかを協議いただくための参考資料としてお示しすることであり、そのためには、現時点で見込まれる改革効果を所管部局に照会の上で取りまとめて反映させるとともに、市の「粗い試算」の期間を延長してお示しすることとした。法定協議会で区割りの比較検討など、協議を進めていただくための参考資料として、一定の条件のもとで試算したものである。

Q12.ここまでの質疑で、財政シミュレーションに見込まれている設置コスト、改革効果額については、大きな変動の幅があることが明らかになった。繰り返すようであるが、財政シミュレーションの作成目的が、特別区の財政運営が将来的に成り立つのか協議するための参考資料というのであれば、設置コストであれば最も大きいもの、改革効果額であれば確実なもののみを反映して示すべきである。財政局が作成した市の「粗い試算」と副首都推進局が作成した財政シミュレーションにおいて、それぞれ異なる効果額が示されている。これは市民をまどわすもの以外の何ものでもない。これについて、市長はどのように考えられているのか見解をお聞きしたい。

A12.財政シミュレーションについては、特別区の区割り案を比較検討するための材料のひとつとして、特別区の財政運営が将来的に成り立つか協議するための参考資料として、一定の前提条件をおいたうえで示ししたものであり、市の「粗い試算」とは作成趣旨が異なるもので、どちらがより正確かといったものではないと考える。なお、現在お示している改革効果額については、府市連携、市政改革による「節約効果」であり、特別区制度の本来の効果としては、広域と基礎の役割分担を徹底することを通じて、広域機能の一元化による都市機能の強化や基礎自治機能の充実による豊かな住民生活の実現を図るところにある。そのため、現在、大都市制度(特別区設置)協議会でのご議論を踏まえ、「新たな大都市制度の経済効果」について、総合区制度の効果と合わせて、専門的な知見・ノウハウを有する事業者の力を借りて数値化できないか検討を進めているところである。

PAGE TOP